経営者インタビュー

がんばる社長を応援する、「コンフォートポジション」の、第2回目のインタビューは、
「ウソはつかない、言い訳もしない、正直に、誠実に、自分の家だったらどうするかを考えて家を作る」

「お客様を幸せにするには自分が幸せでなくては到底、無理!」

という熱い職人魂にあふれた、大工の棟梁、うえやま建設代表の植山修雄さんです。

うえやま建設の理念は、お客様、職人、会社がともに幸せになる「三方善しの住まいつくり」です。


 

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プロフィール

株式会社うえやま建設代表取締役:棟梁:植山修雄(のぶを)氏

http://www.ueyama.com/

1960年名古屋市生まれ

大工棟梁だった父のもと、毎日怒鳴られながら、甘えの一切許されない厳しい環境で、「建前までやっていいと思ってくれたらお金を払ってくれればいい」と魂のこもった仕事をする父の背中を見て、大工としての心と腕を磨く。その後、時代の流れから、下請けの仕事も始めるが、手抜きを強要される仕事内容に疑問を感じ、以後、下請けは一切しない、元請けのみの仕事をする工務店として1990年うえやま建設を設立。大病を克服後、ありのままの飾らない仕事をするようになり、家庭も仕事も順調になった。アフターメンテナンスに迅速に対応できるよう、会社から1時間以内の場所でしか仕事はしない、という顧客第一の徹底した仕事ぶりで、地域社会に貢献する会社として地元で愛される工務店となっている。趣味は、ジャズ音楽。


インタビュー

約束の時間にほんの少々、遅れてみえた植山社長。お客様の話をじっくり熱心に聞いておられたようです。

平身低頭で謝ってくださったあと、こんなお話しをしてくださいました。

植山 :お客さんの話をずっと聞いていたら、遅くなっちゃったよ。僕たちの仕事は、家作りだけではなく、お客さんの家庭での日々の話や思い、そのお客さんの人生そのものを聞く事だからね。家作りは、人生設計を見直して、そこに未来予想図をきちんと描くこと。これができないうちは、家作りはできんよ。

市野 :本当にお客様の言葉から、多くを学んでいらっしゃるのですね。ではお客様の話の中で心に残っていることは?

植山 :建設中のあるお客さんが言ったんだよ。「私たちの大切な家に、心のトゲを残さないでね」って。それを聞いて、心をこめて仕事をさせてもらおうと、改めて思ったよ。職人のその時の感情や気持ちは、必ず現場に形となって現れるからね。それも含めて、現場で学ぶことがとっても大事なんだよ。ともかく、現場。

市野 :なるほど。現場から学ぶのが一番大きいのですね。現場といえば、台風の時にも、建築中の家の土壁が倒れないように一晩中、支えていらしたという大工のお父さまの姿勢からも学ばれたことが多かったのでしょうね。

植山 :うちのオヤジに限らず、あの頃の大工はみんな、台風の時なんかはそうやって家を支えて、「お客さんに引き渡すまでは工事中は自分の家でもあるんだ!」という気概で仕事をするのが当たり前だったんだよ。

市野 :そうやって植山社長も一人前の大工になられたわけですね。では、植山社長流の人を育てる、人材育成法とは?

植山 :現場に投げ込む。おれが教えるより、その方が早いからね。現場で職人と一緒に仕事をして覚える。失敗も経験。たくさん失敗しなくちゃ、身にならんよ、そいつのいいところ、得意なところを伸ばす。

ある時、社員全員を対象に、得意なことは何かと、一人ひとりにそれぞれ社内アンケートをとったら、全員ともみんな、ほとんど同じ回答だったよ。それほど人は、得意なことが他人からはよく見えるんだ。だから、そういうところを伸ばす。専門性を持たせる。例えば、おれは金勘定が得意じゃないから、経理や税理士に任せる。得意なことを伸ばしてやって、得意なやつに任せるのが一番だよ。自分は社長として大局を見ていればいい。大きな失敗をしたら、会社として、おれが責任を取ればいいからね。

市野 :その人の「強み」を見つけて、伸ばす。そして、社長として覚悟を決めて、一回り大きいところから見守るのですね。

植山 :社長としてのおれが信用できなかったら、辞めてくれればいいからね。こんな覚悟ができたのは、どん底だと思った時に、腹をくくったからだよ。仕事が上手くいかなくて、赤字が続いたときに、数字をあげられない営業マンを、それこそ、胸が張り裂けそうな気持で辞めさせたんだ。そいつからも、そいつの家族からも恨まれた。でもやらなきゃいかんかった。今でも、心からすまない、と思っているよ。そうして会社や自分に不要だと思ったものを切り捨てて、覚悟を決めたんだ。「でもおれはやる!」とね。

そして、営業なんかやったことがなかったおれが、かっこいい言葉でもない職人の言葉で、お客さんの気持ちになって、営業というより、下手くそな説明をし始めたんだ。そうしたら、こんなおれの下手な説明でもお客さんがついてくれるようになったんだ。ありのままの自分を正直にそのまま出したんだ。 「決める」と心が安定するんだよ。ウソがないからね。すると、ありのままの自分がでてくる。そうすると家庭も、仕事も安定して資金に「余裕」がでてくる。その余裕が信頼を生むんだ。実行しかない。そして、もしも失敗したら、「ごめんなさい」と心から謝る。

家作りは、本当のことを言うのが大事。ウソはいかんよ。家を建てる前にやることがあるんだよ。家族の問題、相続の問題、心のわだかまり、不安、心配、そういう問題を全部、すっきり解決してから、初めて家を提案するんだよ。 だから、いろいろ聞いて、今、その人が家を建てる条件が整っていない時には、家作りを止めることもあるよ。無理はいかんよ。

それでもって、親は大切にせんといかん。親をないがしろにして、親の土地に家を建てるなんていかん。人としてあるべき姿が大事なんだよ。

おれは、人として恥ずかしいことは、絶対にしたくないよ。

(そして、うえやま建設のこだわり工法、人にやさしい柱、断熱材などの住宅資材についていろいろ説明してくださいました。)

また、施工例写真も何冊か拝見しました。家も自然木の香りが漂ってきそうで、心地よさそうでしたが、何より写真に写っていた家族の満足した幸せそうな笑顔の写真に、心が惹かれました。

市野 :もっと早く、うえやま建設さんに会って、家を建てたかったです。

植山 :タイミングもあるからねぇ。その時に必要なタイミングが。出会いも仕事もね。

市野 :本当にそうですね。 では、会社の今後のビジョンについて教えてください。

植山 :ビジョンか。ビジョンなんて、カッコいいもんじゃないけど、人としての力を高める、社内全員が高い目標を持って成長する、そして成果はみんなで分配する、だね。

市野 :では、近い将来、例えば2年後、あるいは3年後の目標は?

植山 :ハワイ旅行に全員で行く。これは決めてるよ。それから、ショールーム兼事務所を作る。売り上げも確実に増やすよ。

市野 :それでは、売り上げの具体的な目標は?

植山 :今年の目標は今年であるけれど、来年の目標が今年の倍を計画しているから、今年はそれを視野に入れて動いているよ。5年後には、今の3倍弱の数字を毎年、達成できるようにする。当然、人材がいるから、毎年、新卒を定期採用するようにするよ。それが社会貢献にもなるしね。

市野 :社員全員の人間力をあげて、売り上げUPをして分かち合い、社会貢献をする。まさに、「三方善し」の理念どおりですね。では、植山社長ご自身のビジョンは?

植山 :今年は「寛大な心」だね。おれは大病をしたからね、毎日、毎日を楽しく。先のことは分からんから、今を心から楽しむのが大事だよ。

その時に、スタッフのおひとり、設計担当の松山清美さんがご挨拶にいらしてくださいました。

清美さんは、うえやま建設で家を建てられたのがご縁で、社長に誘われてこの会社で働くことになったのだそうです。

植山 :最近の女性はすごいね。これからは女性が社長になった方がいいね。きっとうまくいくよ。きよみさん、社長になってよ。おれはスタッフとして働くよ。

市野 :では将来のビジョンではきよみさんが社長ですか(笑)

植山 :それいいねぇ。きよみさん、社長としてビジョンってある(笑)

市野 :きよみさんにとって、うえやま建設とはどんな会社ですか?

松山 :仕事を「楽しい」って言っていいかどうかは分からないんですが「楽しい会社」です(笑)もともとは子どもも小さかったし、家庭もあるから、そんなにバリバリ働くつもりはなかったんですよ。それでもいいからってお誘いを受けて、ここで働くことにしたんですが、気がついたら、しっかり働いている。引きずりこまれたのかな?求められる以上のことをしようと思って働いているんです。

市野 :仕事が楽しい、と言い切れるってすごく幸せですね。

松山 :はい、そうですね。本当にうれしいですね。

市野 :では、植山社長、最後に、今の若者や、未来の経営者たちへ伝えたいことは?

植山 :「がんばれ」は疲れるから、がんばらないけど、「あきらめない」。お客様がいるから、絶対にやめない。退路は作っちゃいかんよ。 それで、好きなことはやらなきゃいかん。笑顔でね。嫌いなことで金儲けしても続かんからね。好きなことをして、いろんなことを人から褒められると、自分が存在していることが分かるから、本当に心からうれしいよ。

それから、自分を大事にしなきゃいかん。自分を大事にせんやつに、いい仕事はできんからね。社員の一人ひとりが成長を実感して、休みがきちんととれて、家族との時間も大事にして公私ともに幸せであればいいんだよ。そうすれば、仕事も会社もうまくいく。そうして会社を支えてくれる職人さんたちにも適正な報酬で仕事をしてもらう。社員が幸せで、会社に関わるみんなが幸せなら、いい仕事ができて、お客さんを満足させてあげられるからね。

会社経営は難しいことを言わんでもいいんだよ。 みんなが幸せになる「三方善し」でいいんだよ。

 

編集後記

うえやま建設に入ると、天然木のよい香りと、笑顔の社員さんが気持ちよく迎えてくれます。松山さんをはじめ、若い社員の木村さんと植山社長との会話は和気あいあい、時に冗談をはさんで、フレンドリーでした。 社員が「楽しい会社」「アットホームで泥臭く人間臭い会社」「まっすぐな会社」「正直な会社」「心にいい会社」と言うように、適度な緊張感と、和やかな空気が何とも心地よい会社です。 そして、社員が会社を表現した言葉どおり、植山社長ご自身が、人にも、仕事にも、そして生き方そのものにもウソもごまかしもない、まっすぐで情熱的、一本気な男らしい職人さんでもありました。この熱い魂あふれる正直な生き方に、社員もお客さんも絶対の信頼をおいているのだと感じました

2013年5月
市野範子